平成18年3月26日
総務省行政管理局行政情報システム企画課 殿
愛知県豊明市栄町上姥子3番地19
シャトー桜ヶ丘V-401
名古屋税理士会
総務省電子政府推進員中部地区委員
 井上 新
0562-92-8720
arata@iarata.com

オンライン利用促進行動計画(案)に関する意見

平成16年2月2日に、名古屋国税局管内から電子申告の受付が開始され、私は当時、名古屋税理士会の電子申告担当責任者の立場にありました。 そこで、暗中模索ながら、諸条件もギリギリの取得で、国税庁のe-TAXソフトを使って、2月2日の午前9時3分49秒に国税庁のサーバーに最初の送信をさせていただきました。以来その経験を踏まえて、全国に体験談をお話しする機会が増えると同時に、確定申告期及び毎月の法人の申告において少しでも電子申告を試みようと現在も努力し、3年を経過いたしました。
 また、全国の税理士若しくは他団体の方々との意見交換において、電子申告・電子納税のあるべき姿について議論してまいりました。国民の多くが望む「小さくて効率的な政府の実現」を、心から切望し、この件について熱いほど各方面で語っています。
 その思いから、今回の「オンライン利用促進行動計画(案)」について、財務省のNO15〜NO62の範囲において、税理士実務に関連する中で記の意見具申いたします。 

NO15 納税証明書の交付請求

納税証明書を事務所において電子で取得できることは大変便利です。しかしながら、現状では下記のように実際のデータシートを紙に出してしまうと、「納税証明書ではありません」となっています。「電子納税証明書のデータファイルが法令に定める「納税証明書」となります。」ということで、あくまでも電子の証明書だということです。
 FD等の電子媒体で提出することになります。もちろん、これが銀行の窓口で確認できる体制であればいいのですが、導入から3年を経過した現在においても、各銀行がこれで確認している状況にはありません。結局、納税者は紙で再度取り直すことで対応しています。何の意味もない、制度になっています。納税者は370円損した感じになり、銀行とのトラブルが増えるだけであります。

 インセンティブ措置には、「大量に必要な場合でも原本データをコピーして利用できるため一度の取得で済む」とありますが、私どもの関与する中小企業ではその可能性は無く、これをインセンティブとは考えられません。もしインセンティブであれば、少なくともその利用率は上昇するでしょう。利用率が低減しているのは、おそらく、16年度において私同様に実験的にためしに取得してみたものの、何の役にも立たないため再利用しなかった結果が、17年度のダウンになっているものと考えます。

納税証明データシート

 広報・普及活動に「受入先への積極的取組を要請するととともに、利用のための検証用ツールなどの提供を引き続き行う」とあります。  
 この点について、平成16年11月5日の名古屋国税局との座談会で、名古屋地区は各銀行にこれを読み込むソフトをすべて渡しているという説明でした。しかし、導入3年を経過した現在でも、実際に支店レベルまでこの納税証明書の電子データを読み込む体制にはなく、仮に読み込んだとしてもそれを従前の資料に代替することはできないようです。
    すなわち、電子納税証明書を利用する(受領する)側の体制が整わない限り、何の意味のない、手続きになります。銀行や建設業の許認可事務所等の電子に対する認識を高めることを先行させる必要があります。受入側の諸団体にも、電子納税証明書の利活用について、何らかのインセンティブを付与するか、もしくは法的強制力が無い限り、このままではこの利用率は向上しないと断言できます。

 電子申告を利用しない理由の一つに「収受印に代わるものが無い」というものがあります。私は、受信通知で代用すべきだといっていますし、あるいは、別添の添付資料を送付した表紙の控えに収受がいただけるので、それをもって「収受に代わるものになります。」と言っていますがご理解いただけません。事実、収受がないという理由で、受付しない金融機関や建設業の経営審査をする地方土木事務所もありました。したがって、当面、受信通知とこの納税証明書を、紙で出せばすべてに通用するようにしていただくことは、早急に必要であり、普及促進につながるものと思います。実務上の利便性が無ければ、普及は難しいといえます。

NO16〜21 各種届出書

各種届出書に関しましては、電子申告を常に利用している者にとっては大変利便性を受けることは明らかです。
 特に、具体的改善方策にあるような、「納税者本人の電子署名について省略を検討する」というところが実現すれば、その利便性は格段に高まるものと思われます。
 この件が実行されれば利用率が桁違いの数値的に上がることは確実です。
 また、各種届出書だけの電子申請でも利用者開始届けからはじめなければならず、この点においてもシステムの改善がなされたことも大きな成果といえましょう。このWeb上で本人確認書類も無く申請できることは、今回の確定申告において大変心強い改善でありました。
 
 しかしながら、折角のシステム改善もまだ、不完全さがあり、現実のトラブルを経験しました。
  
 例として、平成16年(平成15年度分)に、もっとも電子申告に協力的であった個人事業主のM氏は、気持ちは前向きで住基カードも取得していてくださったのですが、平成17年・平成18年ともに紙で出すことになったという事例があります。
 M氏は、IT系の業者で初年度はいち早く住基カードを取得して送信できたのですが、なにぶん忙しく、平成17年度はイザ申告をしようという時になって、住基カードが紛失していることに気づきました。そこで、市役所に尋ねたのですが、警察へ行って盗難届けを出すようにと指導されました。警察では、そういうのは出せないという判断で、どうしていいかわからず、再発行された時には確定申告が終了していました。当事務所から最終日に紙で提出しました。
 平成18年は必ずという意気込みでしたが、システム改善によりWeb上で「2月26日までに利用開始届を出せば、3月9日の発送ができる」旨の署からの連絡に従い、20日頃に利用開始届を提出し、住基カードの変更を申し出しました。ところが、3月9日を経過しても届かず、確認したところ、「変更の場合は従来どおり2ヶ月かかります。」とか。想定外の回答に驚き、紙で提出することになりました。
  
  もう一つ例があります。折角の素晴らしいシステム改善をしていただいているのに、税務署の方々が理解されていなかったということです。2月10日に私の税理士会支部で、支部集会の際に管理徴収の研修会があり、振替納税の勧奨がありました。その時担当の統括官は、「電子納税というのもありますが、2ヶ月かかりますので、現在ではもう申込みしても間にあいません。是非、振替納税のほうでお願いします。」ということでした。後で、総務課長を通じて訂正をお伝えしましたが、折角の改善も現場で伝言する方々の理解が無ければ何の効力もなくなると思いました。
  
 要するに、システム改善自体はありがたいのですが、それを扱う担当者の意識も改善されなければ、今後もこのようなちぐはぐが起こるのではないでしょうか。
  
 このことから考えても、ID・パスワード(利用者識別番号・仮暗証番号)の発行はWeb上でリアルタイムに行うべきであります。さもなければ、今後も紙で出したほうが安易で、少なくとも各種届出書のためだけに事前申請をして、住基カードを取得する者は稀有と思われます。
 ID・パスワードはネットで即日発行し、CD―ROM(eTAXソフト)はダウンロードできるようにする。現在のように、一番大切なID・パスワードと、ほとんど使うことのできないe-TAXソフトをセットでなければ送付できないという考え方をやめない限り、各種届出書でさえ利用率の向上はないと考えます。

NO22〜23 酒類の販売数量等報告書

この手続きは、税理士業務としてはかなり特殊な方の業務となります。この中においても、「日本税理士会連合会に対して、数値目標」というのが入っていますが、ここの部分は業務範囲外とみなしてはずしていただきたい。
 
 小売酒販組合等に対して協力要請をすると共に、数値目標を課するのであればいいのですが、この件においてまで税理士の数値目標にしてしまっては、税理士として疑問が残ります。私は経験が無いのですが、酒類関係を取り扱う税理士はかなりな年配であり、確率的にPCに馴染まない方が多いのではないかと推測されます。

NO24 更正の請求書

更正の請求書を提出するにあたっては、大量の証明すべき添付書類が多くなるものと思います。この場合、現行法では電子申請をしても添付書類について、別途郵送をせざるを得なくなります。
 更正の請求に限るわけではありませんが、添付書類をイメージスキャナー等で読み込んで、申告書と同時に添付書類として送信できるようにすべきであります。

 e-文書法が改正されて、文書保存はできるようになりましたが、原稿の法律ではその電子署名に住基カードが使用できないということに憤りを感じております。
 電子申告をするにあたって、関与先納税者に対して、他に利便性のない住基カードを取得していただくことを説得することは、大変な苦労であります。また、住基カードの取得は納税者にとって自主的な取得費用の出費を強いることになります。その過程を経て取得していただいた住基カードが使用できない法律であるということは、政府の電子化に全く逆行している制度であるといえます。
  e文書法の早期改正とともに、イメージスキャナーによる添付書類を認めていただき、更正の請求の場合においても、ネット上ですべて完了できるようにすべきであります。

NO25〜46 支払調書(及び同合計表)

この1月における法定調書の提出は大変便利でありました。添付書類別送の必要が無かったからです。ただし、納税者の電子署名が必要であるために多くは送信できませんでしたが、今後、納税者の署名省略ができ、税理士署名だけで済めば、当事務所は100%提出も可能であると考えています。
 感覚的に、法定調書の有利性の広報は弱かったと思われます。この件に関してアンテナを人一倍張っている私でも、法定調書を送信してみてその簡便さに気づいたという経緯もあります。
 また、各大手企業から入手しうる支払調書等は、添付制度そのものを廃止していくわけにはいけないでしょうか。総じて財政基盤の乏しい税理士事務所に支払調書の電子的な添付を求めるより、大手企業のシステム開発において自動的に電子データが国税庁のほうに回るようにしていただければ、添付の必要もない。
 証券会社(25・26・45)、生命保険会社(27・28・42)、損害保険会社(29・30・46)、金融機関(31・37・43、社会保険庁(40)、信託会社(41)あたりは、納税者・税理士を経由しなくても入手可能な範囲だと考えます。この利用率においても、税理士会に数値目標を課するべきではありません。

 少なくとも、このあたりの利用率が、0.00%も多く見受けられるということは、大手企業に電子申請の要請依頼をせず、税理士会のみにその責を求めているように感じられます。税理士会に数値目標を課するのであれば、まずは関連団体あるいは周辺企業の協力を求めた上で、最後に目標設定をしていただきたい。

NO47〜51 事業年度を変更した場合等の届出

現状においても「法人登記事項に関する証明等については、・・・添付を省略している。」という点において、利便性があります。また、具体的改善方策が早期に実施されるのであれば、税理士としては積極的に利活用をしなければならなくなります。
 「第3者作成の添付書類そのもののを送付を不要とする方向」を「平成19年実施」ではなく、早期に実現していただきたい。

 他の項目とも共通しますが、「具体的改善方策」のなかの、「税制改正による変更部分の仕様公開までの期間について極力短縮を図る。」という件について。
    
 現状は、仕様公開が遅れるために、4月決算法人等は電子申告ができないことがありました。最も早いTKCでさえ、ギリギリの提供になります。税制改正後の時間と、ソフト開発の改善時間を考えるとやむをえないことと考えます。また、それゆえ、この改善方策は方向的にはありがたいことです。
 しかし、どうでしょうか、法人税等を含めすべての税目を、国家予算で毎年完璧に修正していく必要があるのでしょうか。ここは、割り切って、仕様公開はいち早くするものとして、民間のソフト開発に委ねることにしてはいかがでしょうか。

 所得税の還付申告、あるいは公的年金等の申告など、所得税申告書のA様式の範囲と贈与税の申告書程度を国税e-TAXの範囲とし、少しでも複雑性を要するものについては民間のソフトウエアで申告する。この場合、税理士経由になれば、税理士が責任を持って電子申告をする。このほうがスムーズな電子申告の普及促進が可能になるものと思います。

NO52〜57  徴収高計算書関係

電子納税については納付書が場面の中に出てきてそのままMPNにつないでいける点において大変便利です。また、納付書を紛失した納税者であっても、現在のように都度都度税務署窓口に日銀番号を入れたプレプリント納付書の発行を受け取りに行く必要もありません。この点から、個人的には大いに利用させていただいています。

納付書

しかしながら大変不思議な問題を含んでいます。
 まず、名古屋国税局との協議会において電子申告について普及しない原因を求められた時に、「納税者にとっての具体的なインセンティブがないから」という意見をお話し、改善についての回答を求めました。これに対して「現行法では紙と電子は同様の扱いをするため、電子だからインセンティブをという取扱いは現段階では想定できない」(名古屋国税局との実務者懇談会回答)ということでした。

 この論理が正しいとすれば、紙で納税する時はそのまま納付書に記入して銀行へ渡せば済む作業に対して、電子納税になると、実印と印鑑証明に該当する電子署名を付与しなければできないシステムは奇異であります。これは明らかな矛盾であります。紙と同じ扱いであれば、納付書に電子署名の必要はないはずです。
 少なくとも、納税するのに電子署名を付与するのはおかしいといえましょう。他人の税金を代わりに支払う物好きな方が多ければ電子署名は必要ですが、銀行のネットバンクおよびMPN使用時にIDやパスワードで本人確認をしているのですから、印鑑証明同等物をつけてまで、何度も本人確認をする意味はないものと考えられます。

 最近、所轄税務署を含め名古屋国税局管内では「電子納税のお願い」を総務課が盛んに叫んでいます。しかしながら、担当者がその具体的な手法をご理解されていない場合があります。「ネットバンクをしている関与先企業には積極的に電子納税を進めていただきたい」と。これは、ネットバンクに繋がっていればそのまま電子納税が可能であると言う誤解を生みます。銀行にMPNの手続きをして、ネットバンクからMPNを使って納税するという、実践しているものには当たり前のことが飛んでいたりします。実際に納税をされていない方の説明はこのように肝心の部分が抜けたりします。また、全国的にはMPNに繋がっていない金融機関もあります。MPNの説明抜きに電子納税を推進することはできません。さらに、電子納税のためだけでも、ICカードR/Wを購入しなければいけません。その購入費用の負担については言及しないで、「電子納税をしてください。」では説得力がありません。
 
 これは行政とMPNとの連携ができていない現われです。行政機構の縦割りの責任範囲をつぎはぎしようするためにこのような複数の本人確認を必要としていると考えられます。このあたりの手続きをシンプルにしない限り、電子納税の普及は遅れることは明らかです。
 
 また、「ATMの普及に向けて金融機関等との連携を強化」という部分ですが、ペイジーの下記のホームページから見ると、ATMについては
  http://www.pay-easy.jp/payeasy_facilities/financial.htm
 現状では都市銀行を除き、ほとんど普及していません。現場は以下のようです。
   
 私は中小企業基盤整備機構の選任講師として、「中小企業の会計」について、愛知県下および岐阜県の信用金庫を中心に講演をさせていただいています。その場合、ほとんどが代表責任者の方々とのお話し合いをさせていただく機会を得ますので、電子納税の話をいたします。ほとんどが、MPNの理解は一応されていますし、ネットバンクを稼動させていますが、ATMでの納税はできていません。納税者の利便性向上には、いま、コンビニが生活の一部である以上、全てのコンビニのATMで納税可能な状態にすべきであります。
 電子納税の利用率を向上させるためには、すべての金融機関が、電子納税MPNの理解をして、MPNボタンひとつでATMからの納入が可能な状態にして行く必要があります。

  また、税理士会支部執行部として常に所轄の税務署と打ち合わせをさせていただいております。署側からは電子納税の推進以来や納税の利用率向上についての要請が支部集会のたびにありますが、そもそも依頼する担当職員の理解が怪しい状態です。公務員は年末調整でご自分の税関係が完結してしまい、電子申告・納税を経験してない方が、電子納税の推進依頼をするのですから、無理があります。
 ネットバンクをする企業は中には、振込料が安いことが動機付けで導入しているところがあります。そんなところに、MPNの手続きを銀行と別途した上で、ICカードリーダライトを購入し、電子証明書を取得するという手続きと時間・費用を要求しなければなりません。ほとんどがこの説明をすると「とりあえずノー」になります。このあたりの現実的な指導を明確化にしていただきたと思います。
  公務員の確定申告=電子申告を業務命令でやっていただきたい。少なくとも、税に携わる方々には、理論ではなく体験を踏まえて電子申告に関する指導をしていただかなければ説得力に欠けることになります。
 
 さらに、国税庁のホームページでは大変利用しやすいように努力されて、源泉の納付を電子で行うようにイータ君と言うキャラクターを用いて解説しています。ところが、源泉イータ君は、電子納税の段階になると簡易なフローチャートで説明してお茶を濁しています。納税者にとっては払込みが完了するまでが一連の作業であります。国税の範囲外になる途中から簡易な説明ではわかりにくい。金融機関との連動が必要ない上、ここからは範囲外という説明は不親切であります。利用側が画面どおりに誘導されれば最後までたどり着けるように、知りたい部分を省略すべきではないと思います。

NO58〜61 給与支払事務所等の開設等届ほか

この項目に限定されませんが、時間に関して大変なシステム改善の努力をされてきています。オフラインが17:15までであるところ、通常期でも21:00まで受け付けてくださるのは大変助かっています。また、現行においても確定申告期には23:00まで受信くださることは大変ありがたく利便性を享受しております。さらに、具体的改善方策においては、「所得税確定申告期間について24時間を目指す。」という目標も掲げていらっしゃいます。是非とも実行していただくことを祈念いたします。
 
インターネットである以上24時間受付が可能でなければ、その意味は半減いたします。
 そもそも、インターネット好きな者の生態は、夜行性であり、通常の時間帯には申告しません。また、めんどくさがりであるため、郵送との併用など考えたくもないものです。そして、気が短いので、スピードを求めますから、手続きに時間がかかるものは馴染みません。一方、インターネットに不慣れな者の生態は、慎重若しくは保守的な方が多いので、仕事から解放された土日に時間をかけてじっくりやる場合が多い。また、ITが根本的に嫌いな方は、機器にお金がかかる事は避けます。いずれにしても、現在のままでは、多くの方を取り入れる体制にはなっていません。
 
 参考までに、30〜40代男性の夜間ネット利用が大幅増加(Web広告研究会が研究結果公表)という記事を目にしました。“日本広告主協会Web広告研究会は、「ブロードバンド環境下における視聴行動変化」に関する研究結果を発表した。これによると、ピークとなる22時台のウェブ利用者が400万人を突破したほか、21時〜23時台のM2層(男性35〜49歳)の利用が増加し各時間帯で100万人を越えたという。また、全時間帯でブロードバンドからの利用者が90%を占めるようになった(2003年は21時台で約70%)、休日デイタイムのネット利用者は平日より100万人近く多い、としている。この調査は、ネットレイティングスによる2004年6月のインターネットの視聴率データをもとに、Web広告研究会が分析をおこなったもの。”
 
 また、“主婦は日中、独身女性は夜間と女性のネット利用は平日中心。女性がインターネットを一番利用する日は平日が86.4%で、既婚者は午前中〜夕方、未婚者は夜〜深夜に利用。ハー・ストーリィの調査から。

 インターネットを一番利用する日は平日が86.4%で、既婚者は9割、未婚者も7割近くが「平日」がトップ。利用時間帯は「夜」(47.1%)が1位だが、未婚者は「夜」から「深夜」が7割以上、既婚者は「午前中」から「夕方」までが5割以上という傾向にある。なお、2002年調査時と比較すると「午前中」から「夕方」の占める割合が36.2%から47.4%に増加、常時接続が普及し、電話料金の安い夜間に集中しがちだった利用が分散しつつあるといえるのではないか。“

 いずれにいたしましても、インターネットで電子申告をする以上24時間365日の稼動を目指すことで、電子申告の利用率は向上するものと考えます。

 時間について実務的に困った事例がありました。
 TKCシステムでは、電子申告において、一括署名・一括伝送のシステムがあります。この度、数件をこのシステムで伝送しましたところ、時間がかかりまして、22:45頃から始めましたところ、23時ジャストに、「ブチッ!」という音がするかのように切れました。たまたま、即時通知まで完了していたので、翌日受信通知をすべて確認し事なきを得ましたが、本文の伝送中の場合どうなったのでしょうか。

 また、同様にこの3月22日までに国税庁は電子申告・電子納税についてのパブリックコメントを募集していました。毎度ギリギリまで送信しない私にも問題はありますが、時間の無い中で少しでも多くを正確にお伝えしようと吟味しているうちに時間は経過します。22日の17時までに送信とありましたが、この場合も17時かっきりに受付け終了になりました。

 相談窓口でお話している最中にシャッターがふって落ちてくるようなイメージを受けます。民間団体(TKCですが。)の場合、このような送信については、利用者側の視点に立って、やさしいシステムになっています。すなわち、伝送の頭がその時間までに入れば、最後まで完結させてくれます。それゆえ利用者は安心して送信できます。上記2例のような経験をすると、「話は時間内いっぱい聞いてやった」という感じになります。パブリックコメントは市民から意見を徴収するものであるはずですから、意見する側にやさしく扱うべきであり、ましてや、電子納税は税を徴収するのですから、柔軟なホストコンピュータの運用システムを考えていただきたいと思います。 

NO62 国税申告手続

電子申告を平成16年2月2日より開始し、3年経過した現在まで累計で150件以上の電子申告・電子納税してまいりました。今後も間違いなく、電子申告を継続的に実施していきます。ただし、この場合、私の所属する会計ソフトベンダーである「TKCのソフト」を使用しております。大切な関与先の申告を完成度の低いソフトで送信することはできず、また、業務の効率を上げるためにも国税庁のeTAXソフトは敬遠しています。しかしながら、少なからず電子申告を実践している者として、下記の件について改善をお願いする次第であります。

1】インセンティブの付与について

電子申告導入前からの主張ですが、インセンティブなくして納税者は電子申告に動かないというお話です。インセンティブの金額に応じてその利用率は比例的に上昇するものと確信します。

この点について、後半の税理士のインセンティブは既に「具体的改善方策」でほとんど網羅されています。「税理士会と協議し、一定の要件のもとに、納税者本人の電子署名について省略を検討する」という部分は、是非とも早期に実現いただきたいところであります。
 税理士は、69000名のうち41000名がGPKIに接続している日本税理士会連合会認証局の証明するICカードを取得しております。必要性が生じた段階で、いっせいに使用する体制は整っています。この改善が実現すればかなりの利用率向上に繋がることは間違いないでしょう。
 
 しかし、これだけでは利用率の向上は税理士関与の範囲に限定されます。一般納税者が積極的になるためには、やはり、一般納税者のインセンティブが求められます。
 電子申告の導入推進に当たり、まず、納税者が積極的に取り組む環境整備をする必要があります。現在のままでは、明らかなメリットは感じられず、申請のためのわずらわしさのみが目に付くところであります。そこで、時限立法で最初の数年間だけと言った形でも結構かと思いますが、例えば所得税の青色申告控除クラスの控除を設けていただければ、電子申告の推進はスム−ズになるものと考えます。少なくとも、電子証明書が必要な間は、電子証明書取得に必要な時間とコスト分(1000円+写真代+時間)にICカードリーダライタの購入費用分は控除しない限り、納税者は、電子申告をすることで実質的な損をしてしまいます。 

2】電子申告における「申告書控え」にあたるものの交付について

電子申告の場合には、申告書控えへの収受印そのものが存在しなくなり、紙ベースの所得証明、納税証明等を使用するしかないこととなると思われます。NO15の納税証明書の意見において既に一部触れていますが、「控え」についてさらに加筆します。

 これまで当たり前のようにいただいていた申告書等の控えへの収受印押印も、当局側の納税者へのサービスの一環にすぎず、提出された行政文書の内容を証明するために行うものではない(「納税者等から提出のあった申告書等の控えに対する収受日付印の取扱要領」)、という前提があることは承知しております。
 しかし、現実に融資等に際し、収受日付印の付いた1表を要求してきた金融機関が認識を変えてくれるかは疑問です。また、収受日付印の必要な公的機関の窓口がいくつか存在することも事実であります。そこで、電子申告導入当初の一定期間については、納税者の要求により、今までの申告書の控えに相当するものを提供するなどを検討していただきたくお願い申し上げます。
 受入側の環境を先に変えていかないと、「収受印」を理由に、参加しない方は多いと思います。   

3】

電子申告における受付時間を確定申告時期に24に時間受付にする改善方策がありますが、これに伴いヘルプディスクの時間も24時間にしていただきたい。さらに、確定申告時期だけでなく、インターネットで行う以上常時24時間365日受付を目指して頂きたい。
   
 ヘルプデスクについては、365日24時間営業は理想像に過ぎないかもれませんが、少しでも長時間窓口が開いているようにして頂きたい。      
 ともかく、電子化の利点は、時間・空間の制約が少ないことですから、その利点を最大限に生かせる為には、24時間365日受付を実現していくべきです。

4】納税額の多い法人の添付書類について

売上が大きい法人は添付書類も多く、私の所属する民間団体(TKC)は、郵送すべき書類一覧を表示してくれたので、電子申告はスムーズにできましたが、e−TAXソフトでその判別をすることになると、莫大な時間を要するものと思われます。すなわち国税の提供してくださるe-TAXソフトは実質的に業務に耐えません。したがって、

また、納税額が3000万円以上の場合、添付書類を2部出すという件について、本文は電子申告で行ったから2部必要ないのに、添付書類は2部提出というのはいかがなものでしょうか。電子申告を行えばそのデータは電子ですから、コピー等はそれほど事務負担が無いはずです。事業規模の大きな法人の場合、添付書類だけでも分厚くなります。本来は、それを回避するために電子申告であるはずです。  

5】国税庁ホームページ(「確定申告書等作成コーナー」)の有効活用

国税庁のホームページ(以後HP)の完成度は高く、利用者にも評判がいいので、さらに力を注いでよりよいものにしていただきたい。最終的には直接、HPから電子申告が可能になるようにすべきであります。

 現状の中に、「確定申告書等作成コーナー」で作成したデータをe-TAXに引き継いで電子申告が可能であることを重点的に広報」とありますが、この点については、広報してもその効力は、現場においては無いといえます。このHPで作成したデータを切り出し、国税e-TAXシステムに組込んで送信することは確かに可能ですが、この手法を使うものは極まれだと思われます。特にPCに慣れてない者にとって、デ
ータの「切り出し」「組み込み」作業は非常に難解に思えるからです。
 HPでなくても、国税e-TAXシステムの強みはこの「切り出し」「組み込み」作業が楽なことだということについては、私の全国的にお話しして回った時も強調してきましたが、イザ現場でこれをしようとすると、大変な不安が残ります。したがって、私自身は、モバイルを関与先まで持ち込み、目の前で署名いただきそのまま送信するパターンが多いといえます。「切り出し」「組み込み」作業を推奨するのは、
 トラブル発生の確率が高いと考えています。

 しかしながら、実際、平成16年度の実績値で、このHPへのアクセス件数は1,023万件。このうち当システムからカラーでプリントアウトして郵送した納税者は445万人。今年度から、白黒印刷でも受付可能ということですから、軽く500万人以上の納税者になるものと思われます。したがって、この納税者がそのままWeb上で電子申告できれば、納税者にとっては具体的に体感できるシステムとなります。これが実現すれば、電子申告の普及率は飛躍的に伸びることは間違いありません。このシステム作りも納税者に対するインセンティブの付与の範疇に入るものと思います。

 セキュリティについては、このシステムの利用者の条件や範囲を限定していけば、IDとパスワードの管理で充分に対応できると思います。どうしても、セキュリティを問題にするのであれば、ICカード&リーダライタの取得を求めるのではなく、バイオメトリクスで可能なようにしていくべきです。当面は指紋認証でしょうか。最近は、USBフラッシュメモリーにもデータを守りために指紋認証システムがあります。低価格なバイオメトリクスの電子署名の読み込み装置を、CD-ROMの代わりに送るほうが、普及率は圧倒的に上昇します。

6】諸外国との比較

電子申告の推進について考える場合には、諸外国の成功例を参考にするべきだと思います。
 その参考データとして下記のものがあげられます。
   http://libwww.gijodai.ac.jp/newhomepage/kiyo2004/P11-20.pdf
この論文の参考資料から、諸外国の電子申告(概要)の項目を見ますと、諸外国の実態が概ね見えてきます。
 
 韓国は、総申告者数に占める割合が、源泉所得税で85.4%、総合所得税で、75.0%法人税で97.1%という利用率です。韓国は法人税・所得税は2003年に電子申告を導入したのですから、わが国との電子申告開始の時間差は1年程度です。にもかかわらず、この利用率は驚異的といえましょう。
 成功要因は「インセンティブの付与」であります。法人税と所得税は2万ウォン(2200円)程度の電子申告による税額控除が設けられています。 それ以上に影響の大きいインセンティブは、税務申告を電子で行った代理人(税務士・公認会計士)に最大200万ウォンをバックマージンとして税額控除するというシステムです。さらに、国、国税庁が一体となってIT政府推進の結果を税務署ごとに公表しています。 また、税務申告書の電子署名は代理人のみのものでよく、さらに、個人の電子署名は銀行発行の証明書を国の認証として認めていて、876万人が既に取得しているということであります。(模範税理士 金鐘植士の話を東京税理士会の吉田友彦先生が報告くださった要約)
 イタリアは2003年のデータで所得税1,267万件の全部100%が電子で行われています。これは2001年に紙による申告書の提出を廃止したことによるものです。また、本人認証がPINコードのみで行われるところも、普及率向上に貢献しているものと考えられます。
 オーストラリアは2002年分で所得税853万件のうち81%が電子で申告されています。この場合の成功要因は、添付書類の提出不要で、添付資料は仲介者が保管と言うことになっています。
 フランスの2002年分所得税の電子申告率が1.8%、ドイツが3.9%と低調であるのは、添付書類を別郵送しなければならない点に共通の推進阻害要因があるようです。
 アメリカは2003年分で49.2%ということではありますが、2004年の単独の電子申告は、前年比12%増で増加率が著しいようです。 この要因としては、本人確認が社会保障番号(納税者番号)を使用していることと、パソコン通信であったものが納税者と仲介者の間でインターネットが可能になったこと、 さらに、特定の低所得者について、電話申告制度を導入していることが上げられます。
 諸外国の電子申告推進成功要因のほとんどは、私どもか当初から各方面に提言している改革案と同じ場合が多く、これを実践した状態であります。 特に韓国は複合的に積極的な推進施策を講じています。日本における電子申告が今後、ドイツ・フランスのような進捗度にならないためには、 成功した国の要因を分析し、そのノウハウを参考にして行く必要があるものと考えます。 

7】数値目標

先般の「IT新改革戦略」で、「2010年度までにオンライン利用率の50%以上」の目標が設定されました。数値目標を設定することは理解できますが、具体的にどのような統計でどのような算式を持って50%とされるのでしょうか。電子申告において、現在、納税者の申告数の0.64%程度と言う数値についても、平成16年2月2日のスタートからの累積値・概算数値に過ぎないように思います。
 名古屋税理士会で顕著な例ですが、平成16年度の初年度のおいては、名古屋国税局管内だけからの電子申告開始でありましたから、大々的なキャンペーンをして、役員関係者には自分の確定申告だけでもともかく電子でお願いしたいと運動してきました。ところが、2年目はめんどくさいので、あるいは1年たってそのやり方を忘れたとか、繁忙期と重なるので後回しにしていたら時間がなくなった、さらには、電子証明書を紛失していた等々の理由で、電子申告をやらなかった人が大変多くいらっしゃいます。納税者においても同様で、2年目に必ず電子申告をするということは限りません。 
 数値目標を設定することは賛成であります。数値化しないとその効力はあいまいに判断されることになります。 この数値までは達成しないといけないというインジケーターの役割を持たせることが必要です。
 しかしながら、この数値目標は国全体のものであって、その責任問題は行政の中でクリアしていただきたいと思います。少なくとも、数値目標を日本税理士会連合会だけに求めるのであれば、これは本末転倒であり、実現しなかった時の犯人探しの材料になります。数値目標は一人歩きしだした時が怖い。日本税理士会連合会及び各地方単位会は、電子申告を推進するためにここまで、多大な金額と人的な努力を払ってまいりました。税理士として、利用できる体制は整っても、利用する気にならない環境にある中では、日常の税理士業務に取り入れることは、ここの顧客サービスの点からしてもマイナスに働くという判断があって当然です。
 数値目標を日本税理士会連合会若しくは税理士にだけ課し、その責任を問うということだけは反対いたします。すべての環境が整った中で、唯一税理士のみが電子申告推進の障壁になっているのであれば、新しい時代にあって税理士の社会的使命が全うされないのですから、その責任追及があってしかるべきであります。現実は、利用する環境があまりに稚拙であるというところに、視点を置いていただきたくお願いいたします。

終わりに

電子申告導入当初から、立場もあり、各場面でいろんな意見を申し上げました。それに対し、国税庁は大変なシステム改善努力をされてきています。
 しかしながら、国はいまだにセキュリティの重要性を考えすぎて、利用者の使いやすさをおいてきぼりにしています。各担当者がセキュリティの問題で責任を追及されないような仕組み作りに、5年間で3兆円という莫大な予算を投じて、かえって、納税者・利用者にとって大きなハードルを作ってしまいました。ITの世界では、利便性とセキュリティは二律背反するものであります。いまは、それを取り除き、利便性重視のほうに優先順位を変えていくことが、IT新改革戦略のあるべき姿だとおもいます。セキュリティに関するトラブルは、政治的にアナログで対処していくべきです。
 民間は今、どのような商品開発であってもマーケットイン思想で開発をしなければ、その商品は市場で受け入れられず、物は売れません。したがって、まず、電子申告・電子納税を普及するためには、発想をマーケットインに変えていくことが肝要です。市場において、納税者・利用者は、具体的に見える利便性を求めます。「自宅やオフィスにいながら申告ができる」「税務署や金融機関に行かなくてもいい」程度の利便性は、その事前準備のわずらわしさや、ハードルの高さに比較して全く説得力がありません。全く新しい制度の導入には、大きな目に見える、あるいははっきり体感できるものでなければ普及は難しいものです。真の意味で「納税者の視点」に立って改善をしていただくことを期待いたします。
 さらに、ITにより本当に新改革戦略を構築するのであれば、民間の発想を大いに参考にした上で、諸外国の成功事例を順次採用していくことが必要です。先進諸国の政策はそのサジ加減で利用率が大きく違っています。
 電子政府の計画が順調であるならば、細かい「改善」でよく、現場の意見を集約することで足ります。しかしながら、今は、「改革」が必要な状態です。それも抜本的な改革です。このためには、政府の根本的な意思決定による強力なトップダウンと、有効な情報を有する現場との親密なコミュニケーションが必要です。

 電子政府の本格的な実現のために政府の英断を期待申し上げます。

■発言者履歴(電子申告に限る)

以上

ホーム電子申告このページのトップ