アメリカ流通業視察ツアーレポート
  平成10年10月10日現在では、急な円高ドル安傾向や株価の値下りで、ついにアメリカ経済にも陰りが見えてきたかという感じを受けます。しかしながら、ここまでのアメリカ経済は元気よ業を中心にして、中小企業診断士の視点から視察をしてまいりました。(ミ−ハ−的な感覚も含む)
 いま、日本の景気は相変らず低迷していますが、元気のいいところをアメリカに学ぶことによって、この不景気を乗越えたいものです。アメリカは規制が少なく土地も安いので、単純には日本とは比較できませんが、純粋に資本主義の中で競争して企業が生残った場合のモデルケースと考えることも可能です。
 視察の中で、毎日簡易なレポートを書いていましたので、元気なアメリカ企業の経営を参考としていただければ幸と思い、ご報告致します。
6月12日(金) NY
 人の集まる所にはそれなりの理由がある。NYのタイムズスクエアが12時(もちろん深夜)を過ぎても交通渋滞し、昼の如く明るく、人種のるつぼとなっているのも、やはりはかり知れない魅力があるからであろう。ブロードウェーのCAT'Sが16年目を向かえるに当たっても、満席であることもしかりである。
 ・スチューレオナード。スーパーマーケットのディスニーランドである。知れば知るほど1店舗で年商100億円近くあげているといわれるだけの仕組みに納得させられる。
 まず、哲学がいい。正面入口に大理石があり、会社の方針が書いてある。
OUR POLICY
   RULE1:The Customer is always right!
RULE2:If The Customer is ever wrong,
         reread RULE1.
 あまりに気に入ったため、ミニュチアの石を購入したので、わが事務所にも入口に置く。顧客第一主義なんて言葉はいまどきあたり前であるが、実際にはこれを実践してない店舗がほとんどであるから、儲ってないのだということを再認識できた。
 また、従業員のモンチベーション管理のすばらしさと、低所得者層をみごとに使いこなしている。このコントロールのノウハウはさらに研究したい。
 特に関心したのは、地域対策である。これからの日本も見習うべき点であるが、厄介な問題をプラスの要素にしていることにWowである。すなわち、近所の身近な小動物を預って作る動物園や店内全体をディズニーランドのようにしているSMという演出、売れ残り商品をを教会に寄附するという件etc、実におもしろい企画である。
 ・ウッドベリーコモン。ともかく広い。米ならではという感じである。雨が降ってなければもっと楽に見ることができたかも知れないが、むしろ雨だから混でなくて良かったのかも知れない。名古屋近郊に同じ施設があれば、妻にひっぱり回されることは確実である。日本では土地の問題があるから我街豊明市の田んぼの中に10階立てくらいのビルを立てて、1フロア22店舗集めれば可能である。やってみたい。店舗の陳列や、店員の態度が特別良いとは思わなかったが、私が買ったカバンのショルダーベルトを忘れたからと言って後ろから追っかけてくれたハートマンの店員はGoodであった。老舗の風格の一部なのかな。
 ・バーンズ&ノーブル。「座り読みOK」の新しいスタイルを持つ、創業120年以上の老舗書店チェーンで、業界NO.1の売上を誇っている。日本でも影響を受けている類似店舗はあるが、本場の感覚は「これぞアメリカ」という迫力がある。
 解説のおばさんが一生懸命お話下さり、愛社精神に富んでいて良かった。日本で可能かどうかはわからないけれど、最近はBookoffががんばっているから、面白い手法とも考えられる。本を買う時間が欲しかった。学生が自らコンピューター検索ルームで検索するシステムはやがて日本でも一般的になるであろう。
 NYを満喫できた1日。感謝!感謝!また来るゾ!
6月13日(土)  NY
 ニューヨークはすばらしい。夢があっていい。ひととおりの物は、日本、特に東京に存在するが、ソフトやシステムが違う。全てが極端に差があり、均一化された日本民族とは根本的な異なりがあるものの、ソフト面で日本はどんどん取り入れて行くべきことを通感した1日あった。
 ・ノードストローム。伝説のサービスに触れたくて、私の22.5の男子物靴を頼んだ。足のサイズを測って「3階」と言われた。3階は子供用品売場である。デパートでこれを言われるのがイヤで、日本ではほとんど街の小さな靴屋を当たっている。この点については同じサービスレベルと言うことである。しかし、店員の配置があの時間帯では薄く、「Sorry」と言ってくれたので、「まあ、しかたないネ」といったところである。日本の高級店と同じ程度の対応しか今日のところは感じられなかった。しかし「ノードストロームウェイ」をこのために読んできた私としてしては、ノードストロームのサービスを信じたい。
 ・ルーズベルトフィールドエリア内のモールがけっこうおもしろかった。女・子供にターゲットを絞り込んで専門特化するところは、これからの業態として堅いところである。
 ・ディーン&デルッカ。ダコスティーノ。ザバーズ。この3店補のHMRの比較はおもしろかった。寿司を中心に考えると鉄火9コで$4.95$5.99$5.80の価格であったが、醤油が後2社がヤマサで前者が中国製であったことから、ザバースが一番Goodではないかと考えられる。ディーン&デルッカは、陳列はすばらしいが、HMRとしてはまだひと息である。ダゴスティーノは、肉屋から始まっただけに親しみやすいが、まあまあといったところか。ザバースは、外見はボロボロだが豊量感が店全体にあふれていた。土曜であったと考えても、すばらしい集客である。HMRについては、さらに研究して行きたいところである。
 ・バーズ&ノーブルのカフェはおどろいた。床にねそべってちらかし読みしているおばはんをふみつけそうになった。本屋の根本を変えている。ひとりでニューヨークに来ても、多分寄りたいところ。
 ・五番街ではもっと時間が欲しかった。ティファニーは外だけ見た。日本人が多くてNoGoodである。ルイ・ビトンは、さすが高級。店に入ったら買わなきゃ申し訳なかった。ナイキタウンの商品の運び方は参考になった。クレート&バレルの陳列は、中央にガラス中心でクリスタル感があった。
 ナイトクールズとTEN'SはVerryGood!!ビバ!ニューヨーク。
6月14日(日) LA
 カリフォリニアの青い空はすばらしい。今朝までのNYの雨模様とうって変わって、心が晴れる程雲ひとつない天候である。根本的に民族の習慣が異なり、同じ国とは信じられないところである。住むだけなら、最高の地域と言える。
 ・ブリストルファームズ。高級感のあるSMである。寿司・鉄火は12個で $4.99と安い。グルメに力をいれていることが明かである。陳列は、見事なまでにカラーコーディネートされており、ピカピカにみがかれたリンゴが食欲をそそる。天井までの空間も、教科書どおり整っていて、キレイな店舗イメージである。店の中心はワイン売場で豊量感のある陳列と、幅のある価格帯で、ワイン好みにはうれしい店舗となっていた。入口の試食・試飲は、うれしい演出である。丼物の弁当も有り、HMRも発達している。
 ・ウォールマート。有名なウォールマートが見学できてうれしかった。ガンコおやじの作った全米一の小売店、それなりに見るべきところはあった。
 しかし、日本のカーマにしろダイエーハイパーマートにしろずいぶんここを研究していることがわかった。同じだもの基本が。ソフト面までは観察できなかったが、最大の小売業としての見えないノウハウが見え隠れてしてたような気もする。
 ・ベビーザラス。カテゴリーキラーの例として、面白い店舗であった。真にわが息子は1歳半であるから、日本に上陸すれば我が家はターゲットになる。家内の子供用品についての問題解決をしてくれる品揃えになっている。3歳児までをターゲットにすれば、その親がロイヤルカスタマーになる。
 ・ラルフス。できたばかりだからかも知れませんが、今まで見たどの店舗より床がキレイでピカピカになっていた。寿司鉄火の価格は$3.99と安く(12コ)安心して買い物できそうである。
 ・ボーダーズ。ボーダースブックス&ミュージック。全米2位の本屋とか。バーズ&ノーブルを追っかけている姿勢が面白かった。椅子が置いてあり、座り読みもしていた。隣のスターバックスコーヒーに対抗して、イートインカフェしかもエスプレッソ中心を併設していることが目新しかった。CDの試聴は、ジャンルごとにベスト5ができていた。日本にもあるが、これはファンには当然のCS条件となるはずだ。
6月15日(月)LA
 ・ノードストローム店長のヒアリングができた。ルールを設定しないで、販売員のパワーを最大限に引き出すというシステムは参考になる。我が事務所の目指すところである。将来計画も意欲的で、いっそのこと日本進出も願いたいところである。社長(現)が35歳というのも面白い。粗利30%〜40%というのも、百貨店として納得できるが、これが完全返金・返品制度の上に成り立っているからすごい。従業員を売上高で判断し、オールスターとして表彰し、モチベーションも向上させる方法等、ブレアの店長にはCSだけでなくESの水準の高さを教えてもらった。
 ・エンバシースイートホテルのマネージャーヒアリング。宿泊先である。全米のCSランキングでエンバシーが2位であることを聞き、ますますこのホテルを好きになった。確かにシェラトンと比べると、問題にならないすばらしいサービス。エンバシーの特徴は、中庭があり、朝食とウエルカムレセプションの酒がタダということだそうだ。100%CSを企業理念とし、返金制度を実施しているので、ノードストロ−ムのホテル版と理解した。
 ・住宅展示場の3棟。妹が一級建築士であり住宅設計をしているので大変参考になった。アメリカは国土だけでなく、家も建売でさえ広いものだと感心して拝見させていただいた。
 ・マザースマーケット。自然食品、健康食品の品揃えの充実は確かである。生鮮の陳列も見事にキレイではある。しかし、この分野は、日本にもすぐれた店舗はある。アメリカではめずらしいということか?イートイン方式のレストランのアイデアは納得できた。しかし、オーガニックランチは、最悪であった。特にスパゲティーは学園祭の焼きうどんレベルであった。写真を撮影していて怖いお兄さんに怒られたことは悔やまれる。惣菜も豊富であったが、鉄火は見あたらなかった。
 ・フライズ。6割から7割が日本製。「店員がぶあいそな分、価格が安い。」という感じである。店内の装飾は、電気店としては、画期的であり、水が正面入ったところで落ちていたのは驚きであった。家電を大切に扱っていない?証明でもある。
 ・ノードストロームラック。本物あってのアウトレットである。購入したくなる設営はいまひとつだが、考えはマネてもよいのではないか。
 ・インカ。成功している企業の割合には客が少ない。増床して問題無しとは行かないだろう。
アメリカならではの企業であるが、コンピュータ社会では化ける可能性のある業態である。
6月16日(火) LA
 LAはでかい。店舗もWow。土地等の問題を考えると、そのまま日本に導入するわけにはいかないが、充分参考になる。診断ではなく事業意欲をそそられる。
・ アルバートソン。通路が広い。主通路は5m、サブでも2.1mある。床もピカピカ陳列は整然としていて、力が入っている。年商3位、純利1位のSMであることがうなづける。幹部がハーバードのMBAで固めてあるのは、店舗から感じられるが、同時につめたさをも感じた。人の採用基準を袋づめのうまい奴とし、アルバイトの中から選ぶということもチェック。
・ セイボンドラック。印象は薄い。一般的なドラックストアである。
・ オンタリオミルズモール。すごいモール。200件のテナント、TV局を持っている。38個のフットボール場がはいるという15万uの建物。どれをとってもビック。動物園が有り、スピルバーグが作ったゲームセンター有、1000席のフードコート有りで、おどろくばかりで
ある。日本では土地問題で無理そうだが、個店の陳列は充分おもしろい(運動靴1200足くらいが壁に並ぶ状観さ、ベントバス&ビョンドの天井までの陳列etc)魅力的でまた訪問したい。
・ オフィス・デポ。日本へデオデオとして上陸しているということであるが、見ていないので、比較できない。カテゴリーキラーとして用途別に考えてあるのが良い。文具屋がコーヒーメーカーを売っているのにおどろいた。
・ ペットマート。臭いは問題。ペットの関連を全くそろえてあり、見事である。グルーミングルームは、顧客へのアピール度が強いと思う。
・ マイケルズ。女性向けのホームセンター。クラフト用品の充実度が目を見張る。顧客の視点で趣味・雑貨を考えぬいている。
・ インアウト。昼食のバーガー屋。マクドナルドの味に慣れている私には、アメリカ味すぎて、どうかと思ったが、けっこういけた。アメリカの食文化はこれからという感じである。1人前を残してしまった。
・ ウオルマート・エコストア。実験店舗とは言うものの、環境問題に真剣に取り組んでいるようには思えなかった。電気のチャジャーは使われずさび付いていたし、棚の管理は悪く空きが目立つ。レジは並ぶ。良い点は、天井からの光の取り方と、広い店舗の中の入口右のエココーナ。これからは、さらに本物志向になるはず。・ イケア。おもしろい。ワンウェイ方式で、ディズニーランドのように次々といいデザインのものがでてくるようで楽しい。物事体は粗悪品もありそうであったが、2階だけで35コのコーナーごとの安売りラックがあった。衝動買しそうである。全体の安さ、コーディネート販売、90日の返品制度、入口でのショッピングガイドとエンビツのサービスは学ぶところが多い。
・ ベストバイ。家電の1位らしく格調の感じられる店舗であった。オーディオ部内が充実している。
・ サーキットシティ。ベストバイに比べて、店内が暗いが、陳列には工夫が見られる。ベストバイに抜かれているが、私はサーキットシティの方が、個性的な味があっていい店舗であると思った。
・ サムス・ホールセールクラブ。会員制の為、顧客は多くなかった。粗率を10%に押さえて、会員で利益を上げているようだが、オープンな感じがないのは、好めないところである。天井高く棚積み、パレットはメーカー直で並べられているようだ。
・ ホームデポ。Wow!Wow!Wow!である。出合った犬も大きかったが、店の大きさや取り扱い品の大きさ、店員のあいそ良さ、全て良し。アメリカンパワーを感じた。ふろおけや、扉、屋根、コンクリートetc家のことなら全て揃うという品揃え。この一店舗を見るだけでもLA視察の意義はあった。
・ トレーダーズジョー。PBばかりで、年商10億くらいあると言う。日本でもありそうな小さな面積の真にボックスストアであるが、顧客でにぎわっていた。ドライフルーツ・ワイン・グローサリーが主力。陳列はいいとは思えないが、POSを使わないレジの、特にアメリカンレディがうれしかった。
・ スーパーKマートセンター。24時間営業。棚は空いているし、床積みは多いし、食品の鮮度も悪い。しかし、カー用品のところに、スポーツカーを置き、その前にバーベキューを並べるクロスマーチャンダチジング方式というのは参考になった。
NY・LAともにアメリカらしさを十二分に満喫してくることができた。日本にも応用できるアイデアや発想の展開方法は、今後の診断に大きな影響を及ぼしそうである。
 仮にアメリカ経済が今後低迷しても、その中で生残るたくましい企業は、日本の参考になることは間違いない。今後は、アメリカ流通業の研究として、アメリカへわたることを趣味にしていきたい。
平成10年10月10日  井 上  新 


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